A. 他宗のお寺から常髙寺に移られたご門徒さんに、決まり事が少なくて拍子抜けされることがあります。確かに浄土真宗は他宗に比べて、しきたりや習慣は少ないかもしれません。
 これに関して「門徒もの知らず」という言葉があります。そのしきたり・習慣の少なさから、浄土真宗門徒は仏教の作法を知らないと揶揄(やゆ)したことばです。しきたりに詳しい方はこれで良いのかと不安をもたれることもあるでしょうし、亡くなられた方に出来るだけのことをしてあげたいという気持ちもとても分かります。しかしながら、これは「作法を知らない」のではなく浄土真宗の信念からきたものかと思います。
 本願寺派のお経本『意譯 真宗勤行集』には、浄土真宗の宗風として次のように述べられています。

「~深く因果の道理をわきまえて、現世祈祷(げんせきとう)やまじないを行わず、占いなどの迷信にたよらない。」

 浄土真宗はこの方針のもと、仏さまの教えに沿わないとされる習俗は基本的に行いません。仏教は仏さまに成ることを目標とした教え。「仏に成る」というのは因果の道理を説く「縁起」等の「法」に目覚めた者とされます(※「法」に関しては「住職さんに聞くゾウ!」で少し触れています)。その目標から逸れると考えられるものは、基本的にしない方針です。
 また、浄土真宗は仏に成るための修行をすることが出来ない者、修行しても仏に成れない者を対象とした教えであり、阿弥陀さまの他力による仏への道を説きます。自力の修行により仏に成ることを説く他宗の教えとは、前提とする立場が異なります。
 例えば他宗では、葬儀や法事の際、自力の修行による功徳を積んだ僧侶が重要な役割を果たす、追善供養(亡き人が仏へと至るよう供養すること、善事を行うこと)をする場合がありますが、浄土真宗は自らの力ではなく、阿弥陀仏の他力による浄土への往生の道、仏への道を説きますので、追善供養はいたしません。全ての仏事は追善供養の場でなく私が仏の教えに出会う仏縁とされます。
 以上の方針と立場により、浄土真宗では必要以上にしきたりにはこだわりませんし、日の良し悪し等も問いません。ですから「守る決まり事はこれだけでいいの?」と不安を持たれることはありません。
 「決まり事、用意することが少ない」=「ご先祖をおろそかにしている」というわけでは決してありませんのでご安心ください。お仏事は故人を偲ぶ大切な機会であり、私が仏さまの教えとその働きに触れる大切な仏縁です。必要以上にかしこまる必要はありませんが、そのことは心に留めていただければと思います。

住職

ポイント
・浄土真宗に決まり事が少ないのは、占いや迷信に依らないという宗派の方針、阿弥陀さまの他力による仏への道という宗派の立場が大きく関わっています。
・「決まり事が少ない」=「ご先祖をおろそかにしている」というわけではありませんのでご安心を。

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